レントゲン・CT撮影の目的
各臓器の状態を知るために行う
・状態とは?
臓器の形態や病巣の広がりのこと
・どうやって知る?
レントゲン:X線を照射して平面画像の濃淡を評価する(2次元)
CT:各臓器の形態を断層化、画像化できる(3次元)
単純X線写真における陰影の濃淡
人体を構成する4つの要素は、カルシウム、水や軟部組織、脂肪、空気で、この順に透過性が低くなり、フィルムでは白く見えます。
胸部単純X線では何が見える?わかる?
- 肺
- 気管支
- 大動脈
- 肺動脈
- 心臓
- 横隔膜
- 肋骨
- 鎖骨
- 上腕骨
- 肩甲骨 など
正常がわからないと、異常がわからない!
撮影条件
標準的な胸部Ⅹ線写真:後-前像(Postero-anterior像:PA像)
・立位、最大吸気で撮影
・Ⅹ線ビームはフィルムから約2m離れたところから 後→前 に投射される
ポータブル撮影:前-後像(Antero-posterior像:AP像)
・ 臥位や坐位で撮影、呼気で撮影されることもある(重症患者、小児)
・ X線ビームはフィルムから近い距離で 前→後 に投射される
・ PA像と比較して、像の拡大率は大きく、鮮鋭度は低下する
胸部単純X線写真で見える正常構造
1.骨格系
・肋骨の数え方
・正面性の評価の仕方
ー 気管と棘突起が平行に並んでいるか?
ー 棘突起が椎弓根間の正中にあるか?
(肩甲骨陰影が肺野から外れているか?)
2.縦隔
ー 気管分岐部の高さ
ー 縦隔・肺境界線
•大動脈肺動脈窓(aortic pulmonary window)
•左下行大動脈線(左縁)
•奇静脈食道陥凹/右食道傍線
•右気管傍線
•左脊椎傍線
•前接合線、後接合線
3.肺門部
・左の方が右より肺門が高い
4.横隔膜
・右には肝臓があるため、右横隔膜は左横隔膜より高い
・左横隔膜下には胃泡を認める
・十分な吸気が出来ていれば右横隔膜は第10後肋骨と重なる
心陰影
・右第1弓 – 上大静脈
・右第2弓 – 右心房
・左第1弓 – 大動脈弓
・左第2弓 – 肺動脈幹
・左第3弓 – 左心耳
・左第4弓 – 左心室
胸部単純X線の見方
では、胸部X線の見方を確認していきましょう!実際にX線を見るときは上記の順番で見ていきます。
- 撮影条件
- 胸郭系(胸部単純X線写真で見える正常構造を参照)
- 肺全野~横隔膜(全体的な肺野の印象、CP angleなどを確認)
- 縦隔系~肺門部(気管、心陰影、CTRなどを確認)
- 両肺野(詳細に肺野の陰影を確認していく)
肋骨横隔膜角(costophrenic angle:CP angle)
肋骨を結ぶ線と横隔膜のラインがなす角
正常:尖っている(sharp)
異常:丸くなっている(dull)代表的な要因→胸水貯留
心胸郭比(CTR : Cardio-Thoracic Ratio)
心胸郭比(CTR : Cardio-Thoracic Ratio)とは、胸郭の大きさに対する心臓の大きさのことです。
右の図に示すように、
(a+b)÷(c+d)×100(%)
の式で算出されます。
正常:45〜50
(50以上で心拡大 or 心肥大)
シルエットサイン
・シルエットサインとは
水濃度のものと水濃度のものが隣り合わせにある場合、それらの辺縁は不鮮明かまたは見えなくなる。このことをシルエットサインといいます。
具体的には胸部正面単純画像で肺炎などによる浸潤影を認め、心臓、大動脈、横隔膜などの境界陰影(これらの臓器は水濃度の陰影である)が不鮮明・消失する所見をシルエットサイン陽性と呼びます。
エアブロンコグラム
気管支の壁は薄いため、通常X線像上では判別できない。
しかし肺胞が液体や組織などで置換されると気管支内の空気とのコントラストが生じ末梢の気管支が透亮像として浮かび上がってくる。
これをエアブロンコグラム(airbronchogram:気管支透亮像)という。
エアブロンコグラムは主に肺胞性陰影でみられることが多いが、高度の間質性陰影でもみられることがある。
間質性陰影(陰影の形態による分類)
炎症などにより生じる間質の炎症 ・線維化は X線上の陰影として 観察できる。
・線状影
肺胞の虚脱や胸膜嵌入によりみられる線状の陰影
・網状影
不規則な線状影や微細な粒状影の混在による網目模様の陰影
・蜂巣状陰影
線維化の進行により、肺が小嚢胞で置換された状態では、蜂の巣のような陰影を呈する。
間質性肺疾患の終末像
*間質性陰影 ≠ 間質性病変
肺気腫の肺炎は網状陰影を示すが間質性病変ではない
浸潤影・スリガラス影(陰影の透過性の違いによる分類)
浸潤影
本来含気がある肺胞腔が液体や組織で満たされた場合、または間質の線維化や肥厚で肺胞腔が虚脱した場合に見られます。
実質性の病変であることが多いです。
スリガラス影
GGO(ground-grass opacity)と呼ばれる。
微細粒状影と同義として用いられる。
すりガラス状の淡い肺野の透過性が低下した陰影。
間質性の病変であることが多い。
辺縁は不明瞭で比較的広範囲に認められ同時に重なる血管影は確認できる。
コンソリデーション(consolidation)
「容積減少を伴わず、肺血管の辺縁を覆い隠す肺野の吸収値の増大」と定義され、肺血管が埋もれて見えない状態です。
コンソリデーション ≠ 浸潤影
浸潤影は胸部レントゲンで用いられることが多い用語。
コンソリデーションはCTで用いられることが多い。
疾患特有の画像所見
・COPD
肺の過膨張、横隔膜の平低化、CP-angle dull、肋骨の水平化、透過性の亢進、滴状心など
・間質性肺炎・肺線維症
両下肺有意の線状・網状影、輪状影、肺野の縮小(横隔膜の挙上)
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