心エコー検査の活かし方(コメディカル)

循環器

心臓エコー検査ってどう活かしたらいいの?

心エコー検査の標準値や見方はわかったけど、実際心エコー検査の結果をどう臨床に活かしたらいいの?ここが分からないまま、結局心エコー検査が苦手になってしまう方は多いです。

この章では、実際の検査結果の“使い方”を学びましょう。

心臓エコー検査の活かし方

まず、心臓エコー検査の“見方”を覚えましょう!
ここでいう“見方”とは、結果の見方の順序を覚え、症例の心臓のイメージを具体的にするということです。見方の順序は、「心臓エコー検査の見方」で解説していますので、ご覧ください。

さて、ここでは私が臨床で実践、指導している心エコー検査の活かし方をお伝えします。
活かし方は、下に書いた3ステップに分けて考えましょう。

1.症例の心臓の特徴を捉えよう!
2.リスク、気を付けるべきことを考えよう!
3.運動時の循環動態について考えよう!

1.

心臓エコー検査から心臓疾患を疑う

心エコー検査の下記項目から、心臓疾患の鑑別を行います。
 ・左室壁運動
 ・左室容積
 ・左室駆出率
 ・左室壁厚

(拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 2011(日本循環器学会)http://www.jcirc.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_tomoike_h.pdfより転載)

心臓エコー検査から運動時のリスクを考える

心臓エコー検査の所見から、リスクを考えます。
特に運動時など、心負荷が増加する際のリスクについて考えます。

下記のエコー検査結果から、実際にリスクを考えてみましょう。

症例1.
  (大きさ)  LVDd/LVDs:38/32 mm
(収縮能・拡張能)EF:30%  E/e’:30
  (弁膜症)  peak Velocity:3.6m/s  meanPG:38mmHg  AVA:0.9cm2
  (壁運動)  びまん性に低下 局所的な壁運動異常はなし

この症例の特徴は①心臓が小さいこと、②収縮能・拡張能も低下していること、③moderate-severe ASの存在、です。
 
これらのことから、考えられるリスクはLow output symdrom(LOS)がまず挙がります。LOSは低心拍出症候群と訳され、その名の通り、心拍出量の低下による症状の出現が考えられます。
 
とくに、脳梗塞の既往がある(脳血管や内頚動脈の狭窄がある)場合などは、心拍出量の低下時に一過性脳虚血発作の症状が出現するかもしれません。ベッドから急に起き上がるとき、運動後に急に休憩を入れる、食事後や多量の排便後など、血圧が下がりやすい環境では特に注意が必要です。


また、このような症例の場合、運動時や脱水時には心拍数が上昇しやすいことが考えられます。
なぜかというと・・・

血圧 = 心拍出量1回心拍出量 × 心拍数)× 末梢血管抵抗  です。

ここで本症例の心臓の特徴について思い返してもらうと・・・
①心臓が小さいこと、②収縮能・拡張能も低下していること、③moderate-severe ASの存在が特徴的でした。
つまり、本症例の心臓は1回拍出量を増やす予備能が非常に低いことが分かります。なぜなら、心臓は小さく、収縮・拡張もしづらく、拍出すべき部分の弁(大動脈弁)は狭窄しているからです。

このような症例が運動を行った際、血圧を維持するために、心臓では心拍数を増やすしか方法がなくなるのです。つまり、本症例にとってのリスク2つ目は頻脈に注意が必要であるということです。


さらに、本症例のようにEFが低値を示すAS症例はLow Flow-Low GradientのASと言います。この場合、meanPGの測定値は過小評価されている可能性があります。

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